私の知る限りでは、国家は既に我々の仕事に必要な遠くから盗み聞きできる装置、夜にも昼にも撮影できる光学機器等の試作品をテスラ社に注文済みです。私の上司の方々は、他の欧州列強にこの分野で対抗するには必要不可欠なものであると理解に至りました」

ターサは、ディミトリイェヴィチが話している間ずっと、頷いていた。今や、まっすぐに眼を見つめている。

「大尉殿、それではなくて、あの時貴君が生き生きと語ったことについてわしは言ってるのだ」

「ああ」

もちろん、ディミトリイェヴィチにはミレンコヴィチが意図していることがわかっていた。彼の意図のひとつは、王国の対敵諜報活動の効率を速やかに高めることであり、またスパイ活動の近代化のための特務学校を創設することであった。

そして、このアイデアの実現のためにトップレベルのサポートも受けたが、いまだにテストする段階まで至っていなかった。

「私がその時さらにお話ししました通り」

と、ディミトリイェヴィチが少し控え目に言い出した。

「この種の進歩のためには、我々は適切な能力者を見つける必要があります。若いうちから教育して、国家と君主に対する絶対的な忠誠を植え付けるのです。新しい訓練を受け、実戦の場で自分の強さを証明できるような候補者にふさわしい人間をまだ見つけていないことを、私は認めざるを得ません」

「それが大尉、その時あなたがそれに関して言ったことを、わしは忘れなかったぞ」

ミレンコヴィチは、口ひげの下で微笑みながら言う。それから二杯目のグラスを飲み干す。ディミトリイェヴィチは一言も言わずに身を傾けてボトルをつかみ、再びターサのグラスに注ぐ。

「副官に中に入れるように言っていただけませんか?」

ディミトリイェヴィチは、眉をさすりあげてターサを見つめ、それから雄牛のように太い首に乗った大きな頭を振り向かせ、閉められているドアに向かって叫ぶ。

「スミィルコ!」

副官は、直ちに部屋の中を覗き込む。

「はい、大尉」

「そこにいる人も入れて」

と、ディミトリイェヴィチが言う。

「了解しました。大尉」

スミリィコがきりりとした声で言い、ドアを大きく開ける。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『私たちはみんなテスラの子供 前編』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。