ある日、8歳の少女から届いた一通の手紙。この問いかけに、ニューヨーク・サン新聞(ザ・サン)の編集長は、記者のフランシス・P・チャーチに、この幼い筆跡の手紙を渡して、社説に返事を書いてみないかと言った。

チャーチは「8歳の子どもへの返事を社説に?」とはじめはぶつぶつ言いながらも、書き上げたのがこれだった。1897年9月21日のこと。

子どもの手紙にお返事するという前置き、「この手紙てがみのさしだしにんが、こんなにたいせつなしつもんをするほど、わたしたちを信頼しんらいしてくださったことを、記者きしゃいちどう、たいへんうれしくおもっております。」

に始まる。

「バージニア、おこたえします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのおともだちは、まちがっています。」

「そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、けっしてうそではありません。このなかに、あいや、ひとへのおもいやりや、まごころがあるのとおなじように、サンタクロースもたしかにいるのです。」

サンタクロースを見た人がいないからといって、サンタクロースがいないという証明にはならない。世界に満ちあふれている愛やまごころこそ、毎日の生活を美しく楽しくしている。

信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、目に見えない世界をおおいかくしている幕のむこうの、たとえようもなく美しく輝かしいものを見せてくれる、と語りかけた。

物質文明・合理主義の風潮が強まる当時において、精神面の重要性を感じていた人々にから大きな反響を呼んだそうだ。その社説は次の文章でしめくくられていた。

「サンタクロースがいない、ですって? とんでもない! うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。それどころか、いつまでもしなないでしょう。一千年せんねんのちまでも、百万年ひゃくまんねんのちまでも、サンタクロースは、どもたちのこころを、いまとかわらず、よろこばせてくれることでしょう。」

*絵本『サンタクロースっているんでしょうか?』訳・中村妙子絵・東逸子偕成社によったもの。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『思いつくまま』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。