永遠(トワ)のやくそく

それから、たくさんの朝と夜がすぎ、ぼくはすっかり大きくなりました。

そして春になると、新しい巣にはこばれていきました。こより川という、大きな川の近くにある巣です。

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こんどのむれのなかまは、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん…。

そして、ひとりの男の子でした。

「とてもかしこくて、おとなしい犬ですよ」

赤いかみの毛のお姉さんが、そううなりました。

「目が大きくて、かわいい犬ね」

「ところどころ黒いから、クロリって呼ぼう」

お母さんと男の子が、なにやらうなっています。

「さよなら、クロリ。いい子にしてるのよ」

ぼくは、いつものようにだまって、お姉さんを見おくりました。

「あれ? おまえ、なかないの? さみしくないの?」

男の子が、ぼくを見て、ふしぎそうにうなっています。

「ねえ、お母さん。この犬、どうしてなかないの?」

「ほごしせつで、むだぼえしないように、しつけられたからよ」

お母さんが、なにやら、うなりかえしました。

「ムダボエって、なに?」

「いみもなく、むだにほえることでしょ?」

「ふ~ん…。じゃあ、むだじゃないほえ声って、なに?」

「え~と、それは…」

お母さんは、少しこまったかおになりました。

「とにかく、むだぼえされると、ごきんじょさんにめいわくでしょ?」

すると男の子は、小さくうなりながら、くびをかしげました。

「犬にとって、むだか、むだじゃないかなんて、わかるわけないのに…」

ぼくは、その男の子を、ひと目で気に入りました。あの、せの高いお兄ちゃんに、少しにていたからです。