ホステスたちの商売っ気の無い会話はママである美紀の耳にも届いているが何も言わない。美紀自身も少々横暴だが酔い客相手にいつも真面目にやってられるかと思うことがある。

そんなときは母の言葉を思い出して自分を戒める。

「美紀、水商売は媚を売る商売だ。多少途中で揉めても客が帰るときには自分から折れて、この店はあんたで保っているのよと縋るような顔で送り出すのさ。そうすりゃ、客は必ずまた来てくれる。男は女に頼られるのに弱いあほな動物さ」

智子はしたたかだった。