田舎では…

田植え時期や収穫時期など農作業中に咬傷事故に遭う人も少なくなかった。中には手当てが遅れ、命を落とす人もいた。マムシは、落ち葉などに溶け込むと、その擬態化したような姿は、一見してもマムシだと判別するのが難しいほどだった。動かずじっとしていれば、余計マムシだと気づきにくい。

【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

秋になって山菜採りに出かけ、うっかり手を伸ばしてマムシに触れるケースも珍しくなかった。

この地方に蝮除け神社があったのも、マムシの咬傷被害から身を守ろうという信仰心の表れからだろう。

神社は古びた社殿があるだけだったが、春先の大祭になると大勢の人出で賑わった。社殿床下の砂は、蛇除けの砂ともいわれ、魔除けのお札と共に買い求める人が多かった。蛇除けの砂を家の周りに散布すれば、マムシが寄りつかないとも言い伝えられていた。

いわば、この時期の参拝は、農作業前の大事な行事になっている。

母も、毎年のように神社に参ったと思う。