全てが裏返ったかのようにあたりが明るく輝き、そして滝の前に、七色の虹が現れた。瑞兆の極みとしか思えない光景に皆がどよめき、「なんて綺麗」ユィリがうっとりとつぶやいた。

新郎が新婦の手を取った。そうか、それで急がせたんだな。日の射す位置と時間を予め測ってあったに違いない。

里の長は気付いて、丘の長の顔を見た。丘の長は、にやっと笑って、口をすぼめてみせた。まるで、口に出してしまったら台なしじゃ、とでも言いたそうだった。

丘の長の妻の祈りが終わると、新婦の父ソニェが新郎アトウルの手を握り、また皆が新郎の肩をたたいて祝福した。その晩、丘の村に戻ると宴会が待っていた。大きな火が焚かれ、獲らえてあった何頭もの猪が焼かれて、煮た米と共に振る舞われた。

丘の長と里の長、ソニェとアトウル、それから何人かの男たちは車座になって、注ぎつ注がれつ、里から持ってこられたいくつもの酒甕を空にした。里の村で一番大きく重要な建物は、広場の北に立つ高床の倉庫である。

常に何人か見張りの者が置かれているが、冬晴れのこの日、里の長はその戸口に登って、広場を見渡した。戸口の下には、弟のソニェ、アトウルとユィリが立っている。

広場には、村のほとんどの者が集まっていた。

中でも毛皮を着こんでいるのは、今日旅立つ八十家族にも及ぶ里者たちと、それから丘の長の周りに集まった二十家族ほどの丘者たちである。寝布にくるまれば、冬に野外で寝ても凍え死にはしないが、丘から提供された毛皮があると、ずいぶんと過ごしやすくなる。

里の長はみなに語りかけた。

「我々の父祖は、西の海の彼方からこの地にやって来た。その時には、三十人ばかりの哀れな難民だった我々を、丘者たちが助けてくれたのだ。このような素晴らしい隣人が居て、我々は幸運だった」

里の長が丘者たちに向かって手を掲げると、多くの者が賛同の声を上げ、丘の長と丘者たちも、歓声で応えた。

里の長は、足元に置いていた木の箱から、何かを取り出した。磨かれた金色の金属の肌に、太陽の光が反射して眩しく煌めいた。

つい先日、滝と虹には、居合わせた里者たちが驚かされたが、今度は丘者たちが度肝を抜かれる番だった。時折の交易によってもたらされるような青銅の鏃などとは、造りも大きさも全く異なる、みごとな一振りの青銅の短剣であった。