でも、後悔が一つあります。マンサード型の三角腰折れ屋根は、明治より北海道に広く見られる、北海道人の郷愁を誘い、親しみやすいのですが、やっぱり、冬になるとその落雪量がハンパなく多かったのです。

業者の担当者は建築前には「本当に落雪は大丈夫か?」という私の問いに「落ちた雪の多くは外側に転げていくから大丈夫」と言っていたのに、直前になり、「隣地にはみ出る」と言いはじめ、建物全体を移動することになりました。

そうして、隣地と少し隙間を多くしたものの大きな施設の三角屋根から落ちる雪の量は大変なもので、すぐにはみ出てしまいました。それだけではなく、1階の入居者の部屋の窓まで塞ぎかねない有様です。

幸い、隣のお宅が除雪業も営む造園屋さんだったから、除雪をしてもらえてよかったものの、そうでなければ大変なトラブルになっていました。

雪が屋根から滑り落ちる音や、窓の外に積もっていく様を見るのは、入居者さんの刺激になっていい効果もあるけれど、除雪コストは余計でしたね。

次回があるとするなら、無落雪住宅に限ります。落雪で1階の窓が塞がれてしまうのではないかと心配になった頃、少し認知症のある入居者さんに「そろそろ、窓にベニア板を立てかけたほうがいいね」とアドバイスをいただきました。

そこで、ふと思い出しました。そうだ、確かに北海道の田舎に行くと、三角屋根の家の一階窓はベニヤで覆われているものをよく目にしました。

なるほど、落雪で窓が破られぬ方策だったのか、と入居者さんから教わりました。私達の世代は無落雪建築に慣れており、その昔からの生活の知恵を知らなかったのです。

意図しなかった困りごとであっても、住宅自体がいい回想法の場になったようです。それにしても自分で家を建てたことがなく、業者と渡り合ったことがないため、勉強代にしては高くつきました。