しかし、相談できる大人の一人であるはずの近所のかかりつけ医には、そのようなお子さんに、ただ不登校というレッテルを貼ってしまうことも少なくありません。発達障がいやうつ病を診断できない医師も多いのです。

大学や研修医時代に児童精神に関することはまず習うことがほとんどないからです。そこで親御さんは、発達障がい診療で有名な県外の専門病院かクリニックに足を運ばなければならなくなります。

私のクリニックにも県外の方は多く訪れます。今まで一番遠くから来られた患者さんは、海外はクアラルンプールから、国内は盛岡、新潟、長野から来られました。

今ではネットで検索して、とにかく評判のいい医師がいればどんなに予約を待たされても、時間や費用がかかってもなんとかわが子を助けようと必死になって訪ねていきます。

本来ならば各県に一つはある大学病院で救ってあげるべきなのですが、発達障がいに長(た)けた医師がいないのです。

ガンなどの命に関わるような有名な病気と違って、発達障がいは蚊帳の外に考えられていることが多く、ほとんどの大学では発達障がいの診療できる医師を育てていないのです。

いくら父親と母親が団結して手を差し伸べたところで、2人だけではどうしようもありません。

このような状況を打破すべく、専門の枠を超えた、大学の枠を超えた、発達障がいを抱えて困っているお子さんを助けるためだけに仲間が集まって、対策を練っていく必要があると考えたのです。

「困っているお子さん」を中心に考え、そのお子さんを取り巻く周りの専門家がお互い仕事の枠を越えて協力し合っていけば、支援の手を早く差し伸べることができるはずです。

そのためにはまず、それぞれの壁を取り払い、お互いの顔を知ることから始めなければなりません。お互いの顔を知らないと、丁寧な論議が必要となる発達障がいに関しての協力体制はとれません。

一堂に会してさまざまな現場で困っている問題点を話し合うべく、誰もが同じ土俵の上で平等に話し合える場を設けることが必要です。