実際、強度等の問題で構造体の部品としてはあまり採り入れられていませんが単品としては凄い性能を持つものがいくつかあります。材料だけでも、特殊な使い方が出来るテープ、多様な接着剤や両面粘着テープ、耐震ジェルやメラミンスポンジ、さらには床敷用の肌触りが良くかつ丈夫なクッション材等が該当すると考えられ、しかもこれらはホームセンターで廉く手に入れられます。

また、木材にしても、今は厚さ2~3mmで幅が3cm以内、長さ90cmの、表面を仕上げられたヒノキの薄板がホームセンターで廉く入手できます。

当たり前のようですが、瞬間接着剤で十分な強度を持つ手触りの良い軽量小型の構造体を作れる訳ですから、応用先によっては新技術と言えそうです。これらの特殊な素材をものに組込めればそれは一つの新技術なのです。

あまり強い力の作用しない生活用品に作るものを限定すれば、この考え方は十分成立するように思えます。知的活動や感性に関わる身の回り品は、必ずしも強さを求められないのでこの条件を満たしそうです。

こう考えると、生物の生き方や形を生活用品に組込み、既存の新技術を上手く採り入れることで生活をより賢くしかつ整えてくれるものが、誰にでも工作出来るように思われて来ます。

我々に許された時間内でそれが実現可能であるという論拠を「ものの進化に要する時間」と題して付録に記しました。既に述べた通り、生物模倣工作は二つの面で生物を模倣することを基本にしています。

このうち、進化については改良を繰り返すことしかありませんが、工作物に生物的性質を与えることについては従来と少し異なる考え方を使うので以下に説明させてもらいます。

同時に、本書で紹介する生物模倣工作例がそれぞれのどれに対応するかも記すことにします。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『生物模倣工作のススメ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。