二 日本文化と世界

5 竹

可愛い動物の中でも、人気が高いのは「パンダ」。白黒の毛並みが、私の「ミーちゃん」と同じ色調なので、とりわけ愛情を感じる。パンダは大きな体格に似合わず、その動作は愛くるしい。なんとそのパンダはネコ目(食肉目)クマ科。おっとりと寝そべっている姿からは、その出自は想像もつかない。

パンダの主食は「竹」。美味しそうに美味しそうに食べる姿を見ると、本当に竹は健康食品なんだろうと思う。人の生活と竹は切っても切れないものだ。

竹といえば筍。よく料理されてきた春先の筍料理は、柔らかな食感と淡白な味わいで、とても美味しい。季節の粋を感じる。食生活に筍が根付いたのも、日本人が絶えずその土壌を大切にしてきたからだ。

竹の種類は太いものから細いものまで様々。それぞれの用途は多様だ。寒い時期の竹は、最も丈夫で、様々なものに使用される。

竹は、能の作り物(大道具、小道具)にも欠かせない。例えば、能の大曲『道成寺』に不可欠な「鐘」を舞台上に運ぶ太い竹。鐘を吊り下げる細く長い竹。秘曲『道成寺』で、万が一あの重たい鐘を支えきれず、竹が折れてしまったらそれこそ一大事だ。冬の竹は、舞台の進行をもしっかり支えている。

他にも、舞台で老人役のシテや、後場(のちば) で再び現世に蘇る亡者の持つ杖。これらもすべて竹でできている。

優れた庭師が、伝承された技術から精魂を込めて作り上げた建仁寺垣は、まさに芸術品と言ってよい。建仁寺垣というこの竹でできた垣根の起源は、臨済宗の大本山、建仁寺。寺院ができたのは、能が生まれたのとほぼ同じ時期だ。

同じく竹で作られた庭の「枝折り戸」や「鹿おどし」。日々の移ろいを感じるその味わいは、人工的にそれらしく作られたものとはやはり似て非なるものだ。竹垣は自然の風や光、年齢によって青い竹から味わいの深い色に変わり、年が経つと表面は「詫び・寂び」を感じるものとなる。

日本人で知らない人はない昔話の主人公「かぐや姫」も竹から生まれた。『竹取物語』は自然から生まれた日本の内なる心の物語だ。

年を経るごとに得も言われぬ風合いを出す竹に「人の生涯」を感じるのは、私だけでなく、人の持つ感性ではなかろうか。

※本記事は、2018年11月刊行の書籍『世を観よ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。