病院がブランドを確立する意義

それでは病院がブランドを確立することにはどのような意義があるのでしょうか?

第一に識別機能があります。患者は診療を受ける際にリスク回避のため、さまざまな情報を集めます。しかし、診療内容をすべて理解することは不可能であり、ブランドがあれば診療の質を識別できます。

第二に品質保証(診療内容の保証)があります。診療内容を信頼できると確信すれば情報検索をしなくなります。いわゆるドクターショッピングをしなくなります。

第三に満足度の向上があります。患者満足度を向上させ、忠誠心の高い顧客の獲得が可能となります。少々のことでは離反せず、友人や家族を病院受診に誘うようなケースもあり得ます。

しかし、ブランドの構築にはいつも患者の期待値を超えた満足を提供して信頼を得て、機能的価値+情緒的価値を見出せるような努力が必要です。ドラッカーはブランドとは、「信頼と約束により売れる仕組みを作ること」と言っています。

パーソナルブランディング

これまで組織のブランディングについて述べてきましたが、個人が自身のブランディングを行うことをパーソナルブランディングと呼び、自分自身を商品と捉え、その商品価値を高める行動を指します。

近年パーソナルブランディングに関するセミナーなどが盛んに行われるようになっており、これからの時代に必要とされるツールです。パーソナルブランディングを行うには、まず自身の強みを知ることが重要です。

皆様は“エレベータートーク”をご存じでしょうか。エレベーターが1階から8階に上がるのに要する時間がおおよそ45~60秒と言われています。

投資家や、会社の社長、教授などにエレベーターで会った際に、自身のプロフィール、研究テーマや、最も興味あることなどを45~60秒でうまくプレゼンできるかどうかです。

この限られた時間でプレゼンできるかが、その人の評価に繫がるわけです。おそらく自身の強みを短時間にプレゼンすることは、1時間講演するよりも難しいと思います。日々自身の強みを常に意識し、それを簡潔に表現できるかが重要です。

そしてドラッカーは自身が「何によって憶えられたいか」を考え、戦うドメインを設定することを勧めています。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。