そんな毎日が十日以上続いた。こんなとき、パチンコや旅行でもすれば気もまぎれるのだが、そんな気分にはなれない。無駄な時間を過ごすしかなかった。就職情報誌などは見る気もしない。どんな理不尽な人間がその会社にいるかもわからない。

募集のかかる会社は大概居心地の悪い会社で、人の入れ替わりが激しいから情報誌に載るんだ、などと決めつけているのは、やはりまだあの会社に未練があるからだろう。

いつまでも納得いかない佑だった。里奈が午前のパートから帰ってきた頃、家の電話が鳴った。

「はい、根本です。」

「あたし。早紀だけど……」

「あっ、久しぶり」

早紀は里奈と会社で同期ではあったが、二人共二十年以上前に結婚退職していた。

「佑は元気?」

「うん。元気だけど」

「そう。元気ないと思ったんだけど、元気だったんだ」

「どうしてそんなこと聞くの?」

「だって、会社リストラされたからあたし、心配しちゃった!」

「え~~っ? リストラ?」

「何よ。里奈、あんたまさか旦那がリストラされたこと、知らなかったの?」

「だって、毎日会社行ってるもの、なんでリストラなんて言うのよ」

「はっ? じゃあ、今日帰ってきたら聞いてみなさいよ」

「わかった。じゃあね」

里奈は冗談だと思った。