② 感染症(O157、SARSとパンデミック)

・O157

恐怖の食中毒菌O157は、病原性の大腸菌です。大腸菌は私たちの体に棲息しており、消化活動をしています。この大腸菌が病源因子をコードした遺伝子(病原性遺伝子)を獲得することによって、病原性を持つ大腸菌になります。

病原性大腸菌には、次の5種類が挙げられます。

・病原血清型大腸菌

・組織侵入性大腸菌

・毒素原性大腸菌

・腸管付着性大腸菌

・腸管出血性大腸菌

このなかで「腸管出血性大腸菌」が体内に入ると、ベロ毒素を産生します。1996年には、大阪府の泉北地域にある堺市などで、食中毒事件が起きましたが、このベロ毒素産生大腸菌の一種の「病原性大腸菌O157」を原因とし、3カ月程の間に、約1万人以上が罹患しました。

1982年アメリカのオレゴン州でビーフ・ハンバーガーを食べて47名が集団食中毒に罹患し、その原因が病原性大腸菌O157であったことがわかって、その存在が発見され、世界的に注目されるようになりました。

この事件によって、ビーフ・ハンバーガーに対する疑念が生じ、それを払拭するため、アメリカのFDA(食品医薬品局)が、ミートパティの製造基準とともに、O157を死滅する方法を報告しました。

それによると、ミートパティ中心部の最低調理温度が68.3℃であること。この温度でO157は8秒で死滅することから、この温度で15秒間以上の処理時間をかけるようにということでした。

なお、ミートパティの保存温度、保存時間により、熱抵抗性も変わります。マイナス18℃の低温で保存した菌の方が15℃保存より熱抵抗性が高い傾向があり、安全性を考慮する場合には、中心温度70℃以上の加熱が必要であるとし、より安全性を確保するには中心温度が75℃になるまで加熱するということでした。つまり、加熱温度を高くすることが、肝要のようです。

O157は、原因食品としては、ローストビーフ、牛のたたき等の生肉などです。「ベロ毒素」という強力な毒素をつくり出す性質があり、大腸をただれさせ、発病後短時間で生命を奪うこともあります。

症状としては、激しい腹痛が起こり、下痢を繰り返し、血の混じった下痢便となります。尿も出にくくなり、強いケイレンや意識障害を起こすこともある疾患となります。

・SARSとパンデミック

2003年、中国南部の広東省を起源とする「重症急性呼吸器症候群(SARS:severeacute respiratory syndrome)が報告され、これが新型のコロナウイルスが原因であることが突き止められました。日本では、同年4月に新感染症に、ウイルスが特定された6月に指定感染症に指定され、第一類感染症としての報告が義務づけられたのです。

SARSは、中国南部広東省で非定型性肺炎の患者が報告されたのに端を発し、北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に、32の地域と国に拡大し、8000人を超える症例が報告されました。

SARSの起源国、中国では初期に305人の患者(死亡例5人)が発生し、2003年3月の始めには旅行者を介してベトナムのハノイ市での院内感染や、香港での院内感染を引き起こしました。この「SARS」により、社会がバンデミックになると大変な人類的大問題になるとも考えていた時期でした。

日本で発生した病はいろいろありますが、昭和初期頃から「日本住血吸虫症」は農業の水田に関わる人を脅かせてきました。これを紹介しましょう。

※本記事は、2018年6月刊行の書籍『EARTH 2050』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。