親自身にも救いの手を

お子さんの治療をする時は、親御さんも同時に、自分の発達障がいを疑い、お子さんだけでなく、自分の人生をより良くするチャンスだと考えてみてください。40代の主婦のKさんは、ADHDで治療中の息子さんを見ながら、自らもADHDであることに気づいていました。

「実は前から息子の薬が喉から手が出るほど欲しかったのです」

Kさんは、私にこう告げると、息子さんは隣でシャツの首もとから手を出し、喉から手が出る仕草をしました。思わず吹き出してしまいました。なかなか楽しい自閉スペクトラム症のお子さんです。Kさんは、小学1年生の時から通信簿に、落ち着きがない、気分にムラがある、わがままなどと書かれていました。よって、小児期からADHDであったことがうかがえます。

さらに、Kさんは、「最近、お金がないんです」と言います。

「どうしてですか?」と尋ねたところ「ネットでいろいろ買ってしまうんです」という返事が返ってきたのです。

「何を買っているのですか?」「料理教室で使う食材を試食のため、たくさん買ってしまうんです。本屋では、料理の本が選べず、10冊くらい買ってしまったこともあります。全部選ぶと、自分で満足してしまうんです」

「お金があると、すぐ使ってしまうのですか?」

「はい、小学生の頃もお小遣いをすぐに使ってしまいました」

私は、ADHDの治療をすすめ、早速、薬を処方しました。

「それでは、次に受診する日を予約しましょう。薬代が高いので、お母さんには負担が大きくなると思います。実は、役場で自立支援費の申請用紙をもらってきて、次来た時に私がその用紙に記入すれば、その次くらいから治療費が1割負担ですむようになります。忘れずに持ってきてください」

子どもの場合、自治体で異なりますが、マル福という制度があり、たいていは中学3年生まで治療費が無料となります。しかし、大人の場合は、保険診療で3割負担が原則です。ですが、自立支援医療制度という救いの道があるのです。用紙に医師が記入して役場に提出すれば治療費3割負担が1割負担になるのです。Kさんにとっては、うってつけの制度でした。