『掛け合い漫才小説』より、『まさかのお母様談義

(トゥルルル~。Sのところへ、かつての学友T女史から電話があった。珍しい。)

S…はい、もしもし。Sです。

T…Tです。ご無沙汰しています。お元気ですか?

S…ええ、まあ。

T…良かった。ところで、G君のお母様は亡くなりましたか!?

S…えっ!? なんですって!?

(G君の母上は、地元では知らぬ人がないほど意気軒昂な女性である。もっとも、昭和一桁生まれで満九〇歳を超えているから、いかに長寿時代とはいえ、最先端を行く後期高齢者には違いない。だがしかし…。)

T…死んじゃったんですか!?

S…え!? うそ。どうして…。

T…あっ!! もしかして、元気だったけど、急に心臓発作で倒れて救急車で緊急搬送されて入院したりしちゃったんですか!?

S…なんでそうなるの!?

T…えっ!! 違うんですか!? 脳溢血(のういっけつ)の間違いでしたか!?

S…はい!? あなた、人のお母様をなんだと思ってんの!?

T…ええ!? なんか変ですか!? ”G君のお母様”としか思っていませんけど…。

S…だったら、もうちょっと礼を尽くしてお話されたらいかが!?

T… あっそうか!! G君のお母様は、まだ死んでいませんか!? と、率直に言わないといけなかったのですね。

       大変、失礼を致しました。

S…あのねえ…。

T…えっ!! 違うんですか!?

S…もうだめ。知らない。一昨日来い!!

T…えっ? 一昨日ですか!? 一昨日はまだお会いしてませんけど。

S…違うでしょ!!

T…じゃ、明日うかがいますね。

S…・・・。

終わり

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『奇跡の軌跡』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。