ダンクレオステウスの午後

長雨がやんで久しぶりに晴れ渡ったある日の午後

風呂上がりに二階の窓から外を見ると

家の前の道(区画整理された幅六メートルほどの舗装道)が

陥没してどこからか水が流れ込んでいた

わが家の敷地は大丈夫だったが

左隣の家は少し傾いているように見える

ともかく道路はひどく陥没していて

これでは車が通行することはできないなと思って眺めていると

隣家の向こうの通りから

わが家の前までつながっている水たまりの中を

鯉が二、三匹泳いでくるのが見えた

もっと近くで見たいと思い

手許にあったアラレを放り投げてみた

すると鯉は思惑通りに窓の直下まで泳いできて

パクリとやった

とりどりの極彩色で体長五十センチはあろうかという見事な錦鯉だった

何個かアラレを投げ込んでいると

数匹の魚が集まってきた

鯉だけでなくもっと小さい魚や

マグロではないかと思うような大きなものまでいた

いったいどこから集まったのか見当も付かない

アラレを投げ込むとパクリ

また投げ込むとパクリ

それぞれが近くに落ちた獲物にすかさず食いついた

アラレは残り少なくなるのに

魚の数は増えてくる

そんな中に見たこともない異様な魚を見つけた

鎧のような鱗 大きな顎 ギョロリとした目の巨大な魚

いかにも凶暴そうなその魚は