聖護院では、残念なことに、参拝者は本堂の前庭までしか入ることができない。幾分奮発した賽銭を上げて、詫びるには詫びたのだが、やはり物足りない。

寺のパンフレットにも八ツ橋のことは一行も触れられていない。ましてや、八ツ橋特有のシナモンの香りをプンプンさせた僧とすれ違うことさえなかった。

門前では、地べたにへたり込んだ参拝者らしき男性から、ここは本堂の中にすら入れないのですねと尋ねられた。この男性も聖護院と八ツ橋との関係を解明できず、立つ気力も失ったのだろう。分かりますその気持ち。

結局、真相は闇の中かと、門前の道路に出たところ、二十m先に八ツ橋の看板が。確認に行くと、八ツ橋の老舗があった。近所には他の八ツ橋メーカーがあるではないか。

結局、聖護院は八ツ橋とは無関係で、「聖護院のある方角で作った御菓子」ということに過ぎなかった。