里奈はやはり実家にお金を置いておくのはよくないと思い、節子の言葉を聞き入れず、通帳にお金を入れておくことにした。そしてカードも里奈が持ち、必要に応じてお金を引き出して節子に渡すことにした。

二週間後、里奈は公証役場に足を運んだ。節子の認知症が進行する前に遺産で揉めないようにしっかりと分割しておくためだ。里奈ばかりが苦労して兄妹は知らん顔というのは納得いかない。

しかし、今決めても何年後かには通帳の残金が変わる。比率で決めても不動産が厄介だ。そこで、里奈は通帳を三つに分け、節子名義の通帳を三つ。里奈は普段の取引の多い通帳を、後の二人はとりあえず千五百万円ずつにしておいた。里奈は九百万円と言ったところ。これからの病院代や介護施設代はほとんど里奈の通帳から出金。後は微調整でいいだろう。しかし不動産が里奈のものとなれば里奈が一番多くなる。それでも節子に提案を説明し、何とか納得してもらった。公正証書は公証人に通帳の口座番号を記載してもらい、不平不満のない分割ということになった。そして、日を決めて証人を立て、公証人、節子、証人二人により、出来上がった。その日、里奈は部屋にすら入れて貰えなかったが、ほんの十分で終わった。証人は法律に詳しい赤の他人。公証人が呼んで来た二人だ。里奈はお礼としてその二人に五千円ずつ渡したが、ほとんどいただけ。

十分で五千円、一分五百円。こんなに割のいい仕事はない。