「タダじゃない広め方って、ないものかな」林はみなに意見を求めた。

大学生らは頭を抱えた。岸谷、砂川、泉も、顔じゅうを皺にして考えた。だが、どの口からも名案が発せられる気配は無かった。林は川田と木崎に目を向け、

「中学生もアイデアがあったら言ってみて」

「はい」川田がすぐに挙手した。

「『貨幣を持ちたい』って人を紹介してくれたら、紹介した人も紹介された人も同じだけ貨幣をもらえるってのはどうでしょう? もらった人がまた他の人を紹介してくれたら、どんどん広がります」

「そりゃ爆発的に増えるな」盛江は感心した。

「待って」泉が制した。

「それって、いわゆる『ねずみ講』でしょう? その調子で増えていったら、莫大な貨幣が必要になって、いずれ回らなくなるわ」

「あ……」

全員、言葉を飲んだ。川田も固まった。

「や、でもいい閃きだったよ」林は川田に笑顔を向けた。

「少なくとも大学生には発想できなかった。ねえ? みんな?」

大学生らはヘコヘコうなずいた。

「他にも案が浮かんだら教えてね」

「はい」川田は照れて赤くなった。

川田の案が起爆剤になったのか、それからあとは次々にアイデアが出た。単独では不十分なものも、他の案を足したり掛けたりすることで、現実的なレベルまで磨き上げられていった。

最終的に次の三つが決まった。

1.最初の貨幣は、決められた期日以降に利息をつけて返してもらう。

2.「ササミダイラ債」を発行し、最初の貨幣を渡す時に買ってもらう。

3.公共事業をやって、携わってくれた人に給料として貨幣を払う。

「『ササミダイラ債』とはよく考えたな」岸谷は岩崎を見て言った。発案者は岩崎だった。

「これを縄文人に説明するのは並大抵じゃないぞ。まずは翻訳するユヒトに理解させなきゃ」

すると盛江、

「その前に、俺たち自身がしっかり分かっとかなきゃな」

みな自信なさげにうなずいた。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。