とはいえ、金属タンクから樹脂タンクへの技術開発の苦労や、成功体験があっての今の事業であって、長年かけて採算の合う事業に育ててきたものをフェードアウトすることは心理的な抵抗が大きい。そうした時は、技術的なシーズよりも、現行事業のミッションというか、事業の本質的なところをつかんで進むべき方向を探る努力がよいかもしれない。

例えば、素人の私には現実的かどうか判らないが、衝突事故時のガソリン漏洩防止ノウハウを持つタンクメーカーであれば、その技術をEVのバッテリーの損傷を防ぐプロテクトカバー商材開発等に活かすことが出来ないだろうかと考える。既にガソリン自動車本体の部品ではなく、EV用のインフラ商材やセキュリティー関連事業への参入を考えているメーカーもあるに違いない。

何はともあれ、EVの事業参入障壁はガソリン車に比べれば、SONYが既にEVモデル車を発表したように、家電メーカーもすぐに対応できるような市場のため、様々なメーカーが参入して来るのではといった予想も聞く。このような地球温暖化の防止に製品開発で貢献しようとするメーカーが、ESG投資の対象に選ばれて生き残っていけば、脱炭素社会に近づいていくのでは。

確か、環境ビジネスオンラインというサイトに、次のような記事があったと思う。

「日本のCO2の排出量の内訳は、火力発電が30%強、輸送分野が20%弱であった。つまり、火力発電を全部太陽光発電で置き換え、自動車をEVにすればCO2を50%も削減できることになる。エネルギーを創る側の主役は太陽光発電だが、エネルギーを使う側では自動車の電動化(EV化)が最重要だ。……2050年までには、主要国を走る全ての車がEVになっていると予想する。……」

もっとも、EVのバッテリーを火力発電の電気に依存している限り、意味がないという指摘もあるので、低コストのリチウムイオンバッテリーの早期開発が、戦略的要因であることは間違いなさそうだ。(2020・2・12記)

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『水平思考で社会問題を詠み解く!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。