第一話 心の始発駅

花つぶれ

初めまして、私は茂・もげる・はげると申します。

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一九五五(昭和三〇)年、残雪がそこかしこに残る春、北海道は富良野町のさらに田舎の山の麓生まれ、その日は日本晴れ、空は真青に、天気晴朗なれど母ちゃんのお腹は、いたいたいたたたた! 波高し。

「コケコッコウ」夜明けとともに「オギャー」産声を上げたのです。

めかたは一貫目(三七五〇グラム)。そうです字の如く母ちゃんの貝から、それはそれは立派な大きな顔・頭をした、どこから見ても決してお世辞にも可愛いとは言えない子が出てきたのです。また顔の中央に咲く立派な花(鼻)付近を、誰がふんづけたのか、肝心なところがつぶれており、雨の日には雨水が入らないか心配されるほどに、鼻の穴は空を向いていました。

それはそれは見事なまでにも、ずば抜けてブサイクな子が誕生してしまったのでした。ブサイク極まりない、笑える顔の私ですが、しかし、よーく見るとなかなかですよ、ただ俳優さんとかモデルさんと比較すると、顔のパーツの配置が若干ほんの数ミリずれているだけで、目だって良く見えるし、鼻くそだって大きいのが取れる。しゃべることだって、おいしいものだって分かるのです。

ただ置かれた位置に若干のずれがあるだけのことなのです。私の顔のことはどうでもいいのですが、その家族もまたちょっと変、なにがって家族同士の呼び名、呼び方が他とは全く違い、非常に興味が持てることから、ここで是非簡単に紹介させていただきます。

長男・茂雄(うんね=筋骨隆々の鉄人二八号)、二男・利美(とー=気は優しく力持ち)、長女・幸子(さっち=働き者で幼い茂の母ちゃん代わり)、三男・勇(いちゃぶ=茂そっくりの顔で、口数少なく優しい男)、四男・茂(いんげ=このたびこの本の主人公を務めています)、そして父・彦蔵(おーちゃん・後ほど紹介)、一九六五(昭和四〇)年死亡、母・トシ子(母ちゃん・トシ子さん=後ほど紹介)、一九九九(平成一一)年死亡、どうしてこのような呼び方になったかは不明であり、誰もいまだに分かっていないし、なぜかあだ名の由来などを、誰も口にしないのである。

それがまた不思議なのです。不思議?と言えば他にもありまして、年の差が五人全員二歳違いなのである。これはやはり計画性が高い母ちゃんを褒め称えるべきと、拍手を送りたいと思います。

さらに、四男いんげは、あだ名が多く、もげる、はげるは当たり前、他に、鼻つぶれ、かえる、おにぎり、サッカーボール、バレーボール、ホームベースなどなど、皆さん言いたい放題で、中でも極めつけは後ほど、この本の第二話に登場しますので、楽しみにしてください。