ぬりえを大人がする事は今は立派な趣味の領域に入るだろう。そのフロアの壁には素敵な花たちや静物画、風景画が飾ってあった。

あっ、田畑さんの絵も飾ってあるではないか、絵の下に田畑さんの名前を素早く見つけたアッキーママは嬉しくなった。その絵は面白い形をした楽器のようであり秋色の音色が飛び出してきそうだった。

秋色のそれは学校では見たこともないし、もちろん習ったこともない。よくよく見ると名前の下に、『たんぽぽ理事長賞』なんて表彰されている。あとでう〜んと田畑さんを褒めてあげたいとほくそ笑んでいるアッキーママだった。

なんだか開放感があると感じたのは天井が高いからだったようだ。大きな窓ぎわの隅に薄いピンク色した胡蝶蘭が飾ってあった。とにかく、とにかく天井が高いのだ。

感動しているアッキーママは、一瞬、心臓の鼓動が『どすん』として血管収縮の音が確かに聞こえた。ここは地下七階かも知れない。そうでなければスノボで滑り落ちる爽快感と、滑降の恐怖心をあのエレベーターの扉のところで感じる訳があり得ないではないか。

ここは常夏ハワイアンズ、地下七階。七〇七号室の招待状がアッキーママのところへ優しくふぁっ~と届いたのであった。

恋して悩んで、⼤⼈と⼦どもの境界線で揺れる⽇々。双極性障害の⺟を持つ少年の⽢く切ない⻘春⼩説。
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ずずず』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。