春:3 青柳の糸揺れる頃

にほひやかなるかたは後れて、ただいとあてやかにをかしく、二月の中の十日ばかりの青柳の、わづかにしだりはじめたらむここちして、鶯の羽風にも乱れぬべく、あえかに見えたまふ。桜の細長に、御髪は左右よりこぼれかかりて、柳の糸のさましたり

(若菜下の巻)

青柳になぞらえられた女三の宮
近くで見た栁の花

源氏が女君たちを集めて女楽の夕べを催した時のことです。六条院春の御殿の寝殿に集ったのは女三の宮、紫の上、明石の君、明石姫の四人です。それぞれに美しい女君の姿を覗いてみて源氏は満悦の境です。

その夜の女三の宮の姿は、光源氏の目に、こういうふうに映りました。旧暦二月の中旬は、今の暦では三月の下旬ごろにあたります。そのころになると高野川や賀茂川べりの柳も、細い枝が青くなって揺れています。

この時期の若柳は、あえかな、いかにもか弱くて、頼りなげな、若いころの女三の宮のイメージにぴったりです。

私はこの時期から柳絮を飛ばす頃までの柳の姿を美しいと思います。

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『源氏物語花筐――紫式部の歳時記を編む』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。