当時この主人は五十過ぎだったでしょうか。脱サラした後料理を勉強し、十年間くらいいろいろな料理店で働きながら、見よう見まねで技術を身に付けていったとのことです。「マスター」というより「だんな」と呼んだほうが似合う気がします。

私は常々、この店の主人を見ながら、職人はこうあらねばと思います。自分の仕事に愛情を持ち、楽しく仕事をする。その結果として、いい仕事ができ、お客様に喜んでいただける。これが本当の職人だと思います。

以前、旭化成の故・宮崎輝社長の本を読んだことがあります。宮崎社長は、「苦労を楽しむ」ということをモットーにしてこられたそうです。毎日の仕事の中には嫌なことや苦しいことがあるかもしれないが、その苦しみをも楽しみにする心の大きさがなければなりません。

また宮崎社長は、「自ら大きな目標を作り、それを達成するまでの苦闘を楽しむのだ」という内容のことも言っておられます。目標を掲げれば、それに挑戦していく過程で、苦闘することもあると思いますが、目標を達成すれば、大きな喜びとなります。

いかなる業界にしろ、プロの世界では、厳しさに耐え、目標を持って勝ち抜いた者が生き残れるのです。そこにこそ、本当の楽しみが生まれてくると思います。

※本記事は、2017年11月刊行の書籍『霧中の岐路でチャンスをつかめ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。