「できない」と言わない

居酒屋ナカソネ住設福岡営業所の従業員もやっと落ち着き始めたころ、TOTOメンテナンスの方々と博多の町でよく飲み回っていました。福岡に出張した折に、時々立ち寄る小さな居酒屋がありました。取引先の支店長の行きつけの店です。

狭い間口で、十二、三人ほどが座れるカウンターがあります。主人と奥さん二人で営んでおり、板前さんの主人はカウンターの中に入り、いつも包丁を握って料理を作っています。

奥さんはカウンターの外で、客にお酌をしながら一緒にお酒を飲んでいます。そのうえ話好きです。主人はまるで正反対の無口。こちらが話しかければ応える程度で、夫婦とはよくしたものです。

その主人の料理を作っている姿が素晴らしく、一つひとつの素材を丹念に料理する手つき、指先にまで、愛情がこもっているようです。少し腰をかがめ、顎を突き出すようにして、体で小刻みにリズムを取りながら、包丁を動かす仕草が実に楽しそうで、我が子をあやすように料理を作っています。

料理職人としてのその姿に感心させられました。カウンターの客は、主人の腕前もまた肴にしながら酒を飲むのです。