TEDと音楽に見る「声の波動」

少し例を挙げてみましょう。TED(テド)という世界的に有名なカンファレンスをご存知でしょうか? 広める価値のある生き方、社会提案などをプレゼンテーションする場として、世界中から発案者を集めて毎年カナダで開催されている講演会です。胸に響くプレゼンテーションに出会うと、とても嬉しくなります。

プレゼンテーターは、さまざまに楽しませてくれますが、技巧的にうまい方もいれば、なかには話し方自体は決してうまいとは言えないのに、多くの聴衆に共感されて人気を博すような方もいらっしゃいます。そうして何人ものプレゼンテーションを聴いているうちにわかったことがあるのですが、それは、多くの人の心に響き、感動を与えるプレゼンテーションというのは、話し方や伝え方の上手、下手ではないということです。

音声分析ソフトで実際にプレゼンテーションをしているときの声を分析してみて、すべては声の波動が影響しているのだと確信したのです。なぜなら、心を打つプレゼンテーションほど、そのプレゼンテーターの声の波形を見ると、1オクターブに含まれる長音と短音を合わせた12音全部がバランスよく鳴り響いていることに気づいたからです。この全音でバランスよく鳴り響く声のことを「フルサウンドヴォイス」と言うのですが、これについては、また後ほど触れていきたいと思います。

もうひとつの例は音楽です。同じ楽曲を同じテンポ、同じキーで歌ったり、演奏したりしても、伝わってくるものは奏者や歌い手によって違ってきます。これも、その人が発しているエネルギーが、ひとりひとり違うからです。その人の発しているエネルギーが声や楽器という増幅装置を通して発信されることで、聴衆の受け取り方が違ってくるのですね。

ですので、発した音色や歌が聴き手にどう伝わるかは、増幅装置の扱い方にかかっている。これと同じことが、コミュニケーションについても言えるわけです。人が発する声の音色は、のどの入り口にあるソフトパレット(軟口蓋)でつくられます。そして、この器官は心と連動しています。

このことについて、詳しくは、次の PART2で説明しますが、つまり、よりよい音色(本当の自分の声)を発して、人の心に響く声のエネルギーを出すには、自分の内面と同化する必要があるのです。「ハートで話すと、どうして言葉以上のものが伝わるのか?」という問いに対する答えがこれです。

こうして見てみると、声のエネルギーは、1対1のコミュニケーションの相手のみならず、大衆の心をも動かす力があり、ひいては、人生そのものにも影響を与えていると言えそうです。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『声の波動で幸せになる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。