発達障害の傾向がある人と出会い、心の中で(えっ!)と驚いても、何も言えないのは、これが言葉では教えられない、雲のような人間同士の期待だからです。実際はそこまでは意識していないでしょう。しかし人の反応に対し驚くなんて失礼だという気持ちや、そこまで要求できるのか、何か理由があるのかな、自分がおかしいのかな、などの意識が働き、その場で驚いたり、注意したり、呆れたりはせず、できず、その場は過ぎていきます。 

この驚き、期待の裏切られ感は、続きます。(この時だけかな)と思っていたら、ずっと続きます。はじめに驚いていないものですから、いまさら驚けません。注意をする、こちらの思いを伝えるのは一大決心です。なにしろ、「普通」や「常識」という根拠の薄いものだからです。

一大決心をして伝えても、本人には響いていない。人には悪気はなく、どこが、なぜ、悪いのかわからないからです。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。