「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこと。本記事では、職場で発生するコミュニケーションの問題と対応策を紹介していきます。

隠れている職場の期待

もうひとつ、それぞれの職場において同じような意識、同じような方向性が求められます。日本的な特質もあるかもしれませんが、「職員一丸となって」この商品を売るためにはどうしたらよいか、車なら車の、保険なら保険の、売るための意識。それは企業の目的でもありますが、雇用されている限りはその意識に同調します。 

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また企業の雰囲気として、家族的であったり、多少の犠牲や身銭を切ることも仕方ないと思ったり、個々、カラーがあります。台風が来ていて、今日は出社しないでくださいという会社もあれば、どんなことをしても来るのが当たり前でしょという会社もあります。 

ブラックもホワイトもいろいろありますが、その方向性と異なることをすれば、大概、事務のお姉さんか上司に「普通は〜」とか「○○するのが常識でしょ」と言われます。これはその職場の狭い範囲での「普通」と「常識」ですが、なぜそれにこだわるかといえば、同じような意識、同じような方向性を持った人間であれば、同質性が確保され、予測可能性が生まれ、安心感を得られるからです。 

これも不文律であり、いちいち口に出して言わなくてもよい集団関係の期待です。純粋な労働能力以上の、情緒的な同一性が求められることになり、何か、昔のやくざの組か「国鉄一家」の名残を感じさせますが、しかしながらこれによって支えられている会社員も少なくありません。