「なき声がうるさいって、おとなりさんから、もんくを言われちゃったわ」

「それは、こまったな…」

パパも、なんだかこわいかおで、うなり声を立てています。

「おまえ、しずかにしないと、ここにはいられないんだぞ?」

お兄ちゃんも、しんぱいそうに、なにかうなりました。

『えっ、なに? なんて言ったの? ぼく、わからないよ』

ぼくは、ワンワンほえながら、みんなのまわりをとびはねました。

すると、なぜかみんな、ぼくを見て、大きなためいきをつきました。

それから間もなく、ぼくはまた、ゴミおきばにつれてこられました。

「ごめんよ。やっぱりうちでは、かってあげられないんだ」

お兄ちゃんは、かなしそうなかおで、ぼくのあたまをなでました。

そして、いきなりじてん車にとびのると、ぼくをおいて、走り出してしまいました。

『あっ! まって! まってよ!』

ワンワン、ワンワン!

ぼくは、ダンボールのかべを、ひっしでのりこえようとしました。

でも、足がとどきません。

じてん車のお兄ちゃんは、どんどん遠ざかっていきます。

『ねぇ、ぼくをおいてかないでよ!』

キャン、キャン!

とうとうお兄ちゃんのすがたは、夜のやみにすいこまれてしまいました。

『なんで? どうして? ぼく、なにかわるいことしちゃったの?』

ク~ン、ク~ン…。

そのうち、つめたい雨がふってきました。

ぼくはプルプルふるえながら、ダンボールばこのすみにうずくまりました。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ソウル・テール だれも知らない、オレたちのじゅもん』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。