また、ミュージック・ケアを同時に行い、集団の場において子どもたちがどういう行動をするのかを観察する機会も、初めて設けました。その間、親たちは別室で保健師による子育て支援講座を受講したり、お子さんのやっているミュージック・ケアを見学したりしています。

健診には、保育園や幼稚園に出向いて行う訪問型も考えられましたが、悉皆(しつかい)型(5歳のお子さん全員に葉書を出して、健診に来てもらうやり方)を選択し、保健センターに親子を集めて行いました。それには理由がありました。

人口3万人の町なので、5歳児が300人程度しかいません。毎月、誕生月のお子さんを集めて健診をするので1年かければ私一人でも健診ができること、そして何よりも親御さんに直接指導できるからです。訪問型では、問題行動があっても親御さんから許可の得られたお子さんしか健診できません。悉皆型だと、発達障がいかどうかボーダーラインのお子さんも含めて5歳児全員の相談に乗れますし、親御さんもちょっとした不安を相談しやすいというメリットがあります。

5歳児健診の中核は「気づき」の健診です。「診断」の健診ではありません。親御さんにお子さんの行動や生活の問題点に早く気づいてもらい、就学に向けて医療と保健と親御さんが連携をすることで、子育ての困難さに早めに対応してあげられると考えたのです。

本当はこれに教育との連携が入ればベストです。この時私は、他の健診ではあまり質問事項にない、睡眠時間やテレビ・ゲームの時間まで問診表に取り入れ、現代社会に見合った健診をできるだけ心がけました。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。