「織田さん、永遠の命を求めて多くの皇帝や資産家がその晩年に悩んだ歴史が世界中に残っていますが、これだけは神様が決めたことですので難しいですね。人間の生物学的寿命は120年が限界です。私の友達の、そう織田さんもご存じでしょう、iPS細胞の研究では世界的権威の中本教授」

「ええ、よく存じています。一度ご一緒に食事をしたことがあります」

本多は織田が食事をしたことがあると聞いて少し驚きながら、

「彼が言うには、iPS細胞を使えば、身体はほぼ永遠に再生を繰り返して生き続けることができるらしいんです。問題は脳細胞にある記憶を継承することができませんから、脳機能がなくなると終わりということになりますね」

「なるほど、やはり最後は脳ですか、ボケたらお仕舞ですね。頭がしっかりしているうちに自分の記憶をそっくり複写してコンピューターに保存しておけるといいのですがね。コンピューターのコピー貼り付けのようにね」

というと、本多も笑いながら、

「そうですね。そんなことができたら、脳細胞にiPS細胞を被せて脳を再生してから記憶を複写すれば元通りになるんですよね」

と答えるのだった。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『U リターン』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。