京都

翌朝、三階のダイニングルームで朝食を取った。

目の前には、ふだんなら絶対に目にすることのない高級食器が、中央の大皿から始まってコーヒーカップやバターナイフに到るまで、一式ずらりと並んでいた。となりのテーブルでは、黒いポロシャツ姿の白人男性が、組んだ脚の上に英字新聞を開いていた。

見れば客の半数以上は外国人だった。ほとんどは観光客のようだったが、なかにはビジネスマンらしいスーツ姿もまじっていた。

食事はアメリカンブレックファストで、メニューにはパン、卵料理、肉料理、ジュースがそれぞれ数種類ずつ用意され、そのなかからシナモントースト、プレーンオムレツ、ベーコン、アップルジュースを注文した。ひとりに戻って以来、これほど手間のかかった朝食を取るのは初めてで、重い銀のナイフとフォークを使い、時間をかけて口に運んだ。

食後には、黒服のウエイターがやってきて、ロイヤルアルバートのカップにコーヒーを注いでくれた。窓の外には京都の街並みが広がっていた。西の山々に縁どられた平野部が大小さまざまな建物で埋め尽くされ、午前の陽を浴びているそれは、それそのものがあたかもひとつの荘厳な伽藍に見えた。

気がつけば、コーヒーカップに口をつけることも忘れてぼくは景色に見入っていた。そして無意識に思うのだ。また、この街に来ていると。