ここがチャンスだと判断して私はキッとなって言った。

『戯言ではないぞフェラーラさん。それは事実だよ。実は今回、ヴォーンさんの力を借りたいと思っているんだ。そうすればあんたの未来は洋々だし、私も助かる』

『ロイドの会長? しかし? なぜ私のためにそこまで? そうか、何か……見返りを?』

『察しが良いね。いや、私だって困っているんだ。あんたが売れる画家にならなければな。でも……たいしたことではない。簡単なことさ。実はエドワード・ヴォーンだが、人も羨むような大権力者。だが家庭的には恵まれなくてね、かわいそうな境遇なのさ』

『家庭的に恵まれない? それはどういうことだ?』

『まあ黙って続きを聞きたまえ。彼には子供が一人もいないのだ。どうも奥さんは子供ができない身体らしい。それで、どうあっても子供が欲しいのだ。それも女の子だそうだ』

『えっ……子供って? 家の……娘? あの子たちをか? と、とんでもない。コジモさん、冗談はよしてくださいよ。気でも違ったのではありませんか?』

『ピエトロ! 気をつけて口を聞きたまえ。私にそんなことが言えるようなご身分か!』

『…………』

『なあピエトロ。よく考えてみろ、このままだとフェラーラは永久に世に出ない。それどころか野垂れ死にだ。なあ、子供は二人もいるではないか。相手はロイドだぞ。これでお前の評価と名声はもう決まったも同然。別にこの世から抹殺されるわけではないんだ。娘も将来はロイドの跡取り。こんな素晴らしい話こそ二度とないくらいだ』

『嫌だ、嫌だ、嫌だ。他のことならいざ知らず、それだけはできない!』