東京都立広尾病院事件東京地裁判決

本判決は、控訴審の東京高裁で破棄されるが、医師法第21条(異状死体等の届出義務)にいう『検案』と『異状死体』について定義した東京高裁判決の原審なので、判決文を記載する。ただし、人物記載は、東京高裁の名称に合わせることとした。

被告人は東京都立広尾病院の院長であるが、当事者は、同病院の看護師である。

【事件番号】東京地方裁判所判決/平成12年(合わ)第199号

【判決日付】平成十三年八月三十日刑事第12部判決
医師法違反、虚偽有印公文書作成、同行使被告事件

【判決】
医師(元東京都立広尾病院院長)
右の者に対する医師法違反、虚偽有印公文書作成、同行使被告事件について、当裁判所は、検察官〇〇〇〇出席の上審理し、次のとおり判決する。

【主文】
被告人を懲役1年及び罰金2万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から3年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

【理由】
(本件に至る経緯)
被告人は医師であり、東京都渋谷区××の甲病院の院長として、患者に対する医療行為に自ら従事すると共に、同病院の院務をつかさどり、所属職員を指揮監督する等の職務に従事していた。被告人は、平成十一年一月八日に甲病院において、慢性関節リウマチを患っていたA(当時58才)を診察したところ、リウマチは長年にわたるものであり、病状は落ち着いているが、左中指が腫れていたので、その部分の滑膜を切除する手術を勧め、Aは手術を受けることになった。被告人は、同病院整形外科D医師をAの主治医として指示した。