ネットで副業か……人とあまり関わりを持ちたくない僕には、やったことないけどアルバイトより、いい小遣い稼ぎになるかもしれない。

「健ちゃん!」

「どうした?」

「僕の作品がこのアプリで売れたら、一緒に焼肉を食べに行こう! 健ちゃん焼肉好きだろ? 教えてくれたお礼にごちそうするよ! あと、もしも僕が結婚することになったら一番に言うね!」

「結婚って急になんだよ。彼女もいないくせに気が早い話だな。まぁいいぜ。早く売れるといいな」

小学五年生の時の先生が言っていた。『自分の結婚を一番に知らせるのは親じゃなく親友だ』って。

僕の勝手だけど健ちゃんとは友達以上の関係になれたらいいな。親友になりたい。

健ちゃんは、グシシと笑って、日差しが差し込んだ眩しい階段を昇っていった。僕は彼の影を踏まないような三歩下がった距離で健ちゃんと話した。友達だから本当は試されたりするのは嫌なはずなんだけど健ちゃんは違った。僕を知ろうとしてくれていた。

「じゃあ、昨日の昼飯は?」

「ランチ。内容は味噌バターラーメンと餃子三つとコーンとキャベツの千切りサラダ」

「さすがに簡単だったか。じゃあ、一週間まえの昼飯は?」

「その日は学食じゃなくて学校から二番目に近いファミレスでドリアとスープセット。健ちゃんはカルボナーラで三十円プラスして量多め」

「ちょっと待ってろ」

健ちゃんは入学した時から持っていた青から濃い青に育てている本革の手帳カバーをつけた手のひらサイズのメモ帳を取り出し、ページをペラペラとめくり「合ってる!」と少し大きな声で言った。

「メモなんてしてたの?」

「普通はメモでもしとかないと覚えてらんねーの」

そうなのか。まぁそうなんだろうな、と思った。僕が普通じゃないのだ。けど、こうして健ちゃんに人とは違うと痛感させられるのに不思議と嫌味は感じなかった。僕にこんな風に興味をもって話しかけてくれて、メモまでとって僕を信じようとしてくれる人は今までで初めてだった。

 

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『100点をとれない天才の恋』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。