あれから五十年余、オランダの青年がプラスチックによる海洋汚染と地球温暖化問題を提起し、NPO法人を立ち上げて海洋汚染調査を開始したとの報道を見た。結果、インド洋海流が東南アジアの国々の沿岸からプラスチックゴミを集めて日本近海に流れる黒潮につなぎ北上した後、今度は北太平洋から流れ下るカリフォルニア海流に乗せて北米カリフォルニアの太平洋上沖合にプラスチックの巨大な溜まり場を形成させている事が証明されたのである。

プラスチックの劣化は遅く、二~三十年後に劣化が始まっても脆く砕けるだけで今度はマイクロチップとなって海に拡散されて、それを海の生物が食べ食物連鎖汚染を起こす事も同時に報告されている。

さらに、本書の草稿を続けている二〇一九年六月、偶然に大阪サミットでプラスチックによる海洋汚染問題が採択された。ようやく半世紀前に私がショックを受けた美しい海に漂うゴミ問題が世界で取り上げられるようになったのだ。半世紀前に式根島からの帰航時嫌な思いをした海洋汚染問題にやっと人々が目を向け始めた事が嬉しい。

一方、三・一一東日本大震災から一年後、カナダの西海岸に津波で流された大量の瓦礫が山を築き、また本書を書いている最中にも震災発生から丁度八年掛けて津波で流された小船が高知に流れ着いたと報道されていたが、その船は太平洋の海の道を一人ぽっちで何回りしていたのであろうか。海流はロマンも運べば地球規模で瓦礫・ゴミも運ぶ古より人間と深い関わりのある海の道なのだ。

[写真]三角波
※本記事は、2020年11月刊行の書籍『海の道・海流』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。