予定の日になり、笹見平には朝から他集落の人々が集まってきた。彼らは中の様子を目の当たりにし驚いた。笹見平付近に杭囲いの砦が建ち、時折暮らしの煙を立てているのは誰しも気付いていた。けれどもその内側に、見たことのない形の建物があり、きれいにふき固められた地面があるとは思いもよらなかった。おまけに、若い住民しかおらず、ボロの薄布をまとって、畑をやっている。縄文の人々には、にわかに信じられなかった。ここは一体なんなのか。彼らはどうやって生きているのか。なぜ口に覆いをしているのか、若者ばかりで親はいないのか――。

一番最後にやってきたのは、イマイ村代表ユヒトと、例のならず者集落の代表者だった。浅黒く筋骨隆々たる大男で、全身生傷だらけ。顔には獲物を狙うような鋭い目が二つ。ぎょろぎょろして睨みを利かせている。先に集まっていた人々はその姿におののいた。やがて説明会が始まった。

場所は観光案内所前の広場。みなアスファルトに尻を着いて座っている。

「笹見平にようこそ」

林は前に出て挨拶した。

「私たちの集落は、若者だけで暮らしています。農業と、木の実拾いと、狩りや釣りをしているのは、みなさんと同じです。でも、このやり方でいいのかと思い、今日はみなさんに集まっていただきました」

脇にユヒトが立ち、縄文の言葉に同時通訳する。

その後、林は簡単に自己紹介をし、いよいよ貨幣について説明を始めた。