第二部 教団~4

交番に戻ると、老人は相変わらず腑抜けのような顔をしていた。顔には表情がなく、宙を見つめている。

「どうやって連れて行きます。タクシーにも断られるだろうし」

中年のおまわりさんは、困った顔をしていたが、風間が泣きつくとやがてタクシーを呼んでくれた。風間はもう意地になっている。このまま年老いていけば自分だってこのような境遇に陥らないとは限らないのだ。

タクシーの運転手は、老人を見ると嫌そうに首を振っていたが、風間がシート代を出すと言うと、しぶしぶ承知した。交番の手前断れなかったのかもしれない。

千円一寸のところを一万円も払って病院についたその後がまた一苦労だったのだが、風間はそれからはもう思い出したくもない。何とか病院で包帯を代えてもらい、こざっぱりした格好に着替えさせると、一日だけ空いたベッドに入れてくれることになった。

明日の朝引き取りに行くという条件で、電話番号を聞かれ、身分証明書まで提示させられた上で、ようやく風間が引き取ったときは、もう十一時をまわっている。クリスマスパーティーどころの騒ぎではなかった。