ある日、ハムレットとガートルードが二人きりで話せる機会ができた。ハムレットはガートルードに聞きたいことがあった。

「なぜ先王が死んでからわずか二か月しか経ってないのに、クローディアスの妃になったのですか?」

「それは政治的な問題で、仕方なかったのです」

「あなたは前の素晴らしい王のことを忘れてしまったのですか?」

「人は前を向いて生きていかなくてはならないのです」

「そんなきれいごとは聞きたくない、あなたは弱い人間だ」

「それ以上聞かないでください! 誰かを呼びますよ」

「僕はあなたが好きだったんだ。でも先王の方があなたを幸せにできると思って納得したんだ。でも今の王は違う」

そのとき後ろのカーテンが少し動いた。ハムレットは

「そこにいるのはクローディアスか」

と言って、カーテンの後ろにいる人を剣で刺し殺した。慎重なハムレットだったが、ガートルードとの会話で混乱していたのだ。カーテンの後ろにいたのはクローディアスだった。

「なんということを!」

とガートルードが叫んだ。ハムレットは

「当然の報いだ。このことは誰にも言うなよ」と言った。

彼は自分でも何を言っているのかわからなかった。

デンマークの王は誰も後を継ぐ者がいなかったので、結局、王家の遠縁にあたるハムレットが新国王になった。そしてガートルードはハムレットの妃になった。しかし、ガートルードがレイアーティーズにクローディアスを殺した真犯人はハムレットだと教えてしまった。レイアーティーズはハムレットを殺し、デンマークは混乱した。その結果、デンマークはフォーティンブラスが統治することになった。

ちなみに、ハムレットの親友ホレイショーは、ラテン語学者であったが、最近、銃器の製造や刀剣の収集に専ら関心を注いでいる。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。