再会

――長い年月を経て、再びこの街に降り立ったとき、パングレアスは昔と変わらない姿で私を迎えてくれた。あれから三十年以上は経っているはずなのに、そこには失われたものは何もなく、まるであのころからずっと時が止まっていたのではないかと錯覚するほどだった。

寂れた家々の並ぶ通りは相変わらず埃っぽかったけれど、そこを行く人々は皆知り合いのような気がされ、路地から路地へ元気いっぱいに走り回る幼子たちの目は獲れ立ての魚のように輝いていた。風景が少しだけ違って見えるのは、大人になって視点が高くなったせいだろうか。

私はここで、キューバの田舎の人々の暮らしや土地の歴史、伝承を集めて、それについての本を書こうとしていた。入り江の奥の海岸沿いにへばりつくように開けたこの街は、キューバ建国以来、僻地ならではの自然な成りゆきとして都市部における政治経済の発展から取り残されていた。

革命やアメリカとの対立などのニュースは入って来こそすれ、住民たちの実際の暮らしにこれといった影響を及ぼすことなく時を経てきたこの街では、未だにアフロキューバ的な迷信や超自然的な現象が本気で信じられていた。言ってみれば、このパングレアスでは、どんな怪しげなこと、不可解なことでさえも、起こりうるのだった。