(3)感染症の脅威

① 温暖化が感染症を増幅している?

2000年、鳥インフルエンザがタイや中国で発生しました。このインフルエンザは、家畜である鶏などに感染すると、非常に高い抗原性を持つものがあり、鳥から豚へそして人間にも感染されると懸念されていました。新型ウイルスへと進化するということは、当時、エコアが発行していた「いきいきライフ」情報誌で展開し警鐘を鳴らしました。

しかし、2009年秋、懸念されていたインフルエンザは鳥由来のH5N1ではなく、豚由来の新型インフルエンザウイルスH1N1でした。H1N1が猛威を振るい世界中がパンデミックの状態になったことで、感染症の怖さを思い知らされました。

N1H1型は、幸いにも毒性が低く、飛沫、経口によって感染しても、健康体の人であれば通常のインフルエンザのように、タミフル、リレンザの投与で回復できるウイルスです。そのため、新型インフルエンザでも爆発的な感染が予測される第二波に関しては比較的落ち着いた対策がとれました。

しかしながら、ワクチンの入手に関しては、病院によって差が生じ、接種できる時期が予定より大幅に遅れました。その間、重症化した患者が増加し、感染の検査においては、感染していることが判明したにもかかわらず、病院によっては新型インフルエンザでも爆発的な感染が予測される第二波に関しては比較的落ち着いた対策がとれました。

次期新型インフルエンザとして予測されていたH5N1の鳥インフルエンザは毒性が強く、空気感染の可能性もあることから、これが新型となっていた場合、パンデミック(pandemic)映画の「感染列島」(2009年)のようにさらにたくさんの感染者、死者が出る可能性は高くなります。

豚由来の突然変異が起こって私たち人類が初めて遭遇したウイルスは、人間から人間への感染を広げる最中、さらなる突然変異を起こす可能性もありました。

人類の歴史の中では、およそ100年のスパンで新型インフルエンザが発生しています。しかし、わずか30年前頃までは人は地域の外に出ることが少なく、新型感染者が発生してもゆっくりと広がる感染が普通でした。

人口が急速に増加し、世界各国で多くの飛行機や船、列車などにより発生地域以外の場所を多くの人が移動している現代社会において、新型インフルエンザは1〜2週間で驚異的な広がりを見せ、一気に世界中に感染したのです。

マスコミ情報で飛行機での検疫を厳重にしていたことが記憶にあると思いますが、広がった感染地域を確認すると船からの感染の広がりであったとも言われています。これは現代の多様なグローバル化が生んだ新たな脅威であり、今後さらに毒性の高いウイルスなどが発症した場合は国際的な対策が必要でしょう。

そして、なにより驚くべきことは、H1N1豚インフルエンザは豚の需要の多いメキシコにおいて、より良い品質の豚肉を作るため、さまざまな品種を掛け合わせていたことが発生原因で、人類が手を掛けて生まれたウイルス変異であるとも言われています。今後もウイルスの進化は人類生存にとって不安な要因であることは間違いありません。

感染症は人類の脅威であり、ウイルスの進化と人間の抗ウイルス対策との競争です。WHO(世界保健機関:World Health Organization)は2010年に入り、新型インフルエンザは下火になったとはいえ、再発の可能性がゼロではないことに注意してほしいと通達しています。

2017年1月に、WHOから中国の香港で、「鳥インフルエンザA(H7N9)」の感染者一人が検査確認されたと発表がありました。そしてWHOでは、H7N9の感染源は、感染した家禽との接触または生きた家禽を扱う市場などのウイルスに汚染された環境との接触を通して感染しているとし、各国に対して国民の健康に備える活動を続けることを要請して、中国に滞在する方への注意として手洗いや咳エチケット、また、鳥に直接触ったり病気の鳥や死んだ鳥に近づかないよう喚起し、入国の際に発熱、咳、喉の痛みの症状がある人は検疫所に相談するよう促しました。

ただし、現時点では特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨はしていませんが、突然パンデミックの危険性を持つのが感染症の怖いところです。くれぐれも即時に対応できるよう、慎重を期したいものです。

このH7N9はその後、8月に3人、9月に1人が罹患し、2人が亡くなっていますが、2013年からこれまでの確定患者数が1562人となり、5回目の流行の波で、患者数と地域分布がこれまでの流行の波よりも大きくなっていることから、WHOでリスク評価をし、感染制御対策の重要性を強調しています。このように、私たちは常に感染症の脅威に晒されていると言えましょう。

感染症は、インフルエンザだけではありません。世界の人々はまだまだ多種多様な感染症や、環境問題から発生する感染症のリスクを抱えています。例えば近年、地球温暖化と感染症との関連性が指摘されています。

人口増加やエネルギーの使用で持続可能な地球を合言葉にしてきたCOP気候変動枠組条約締約国会議の京都議定書で世界192カ国が締約して20年、前述しましたが人間は快適性、便利性、更には、経済的に上手に推進できず、一方世界の人口は73億万人と増加、国内全体ではこの100年間に平均2・6℃気温が上昇したと報告されています。

これにより、全ての生物は、棲息圏を拡大することになります。南半球での蚊類は人類の最たる大敵、ウイルス媒介生物であることは前述のとおりであり、感染症としてデング熱、ジカ熱、フィラリア、黄熱等があります。また、先のリオデジャネイロオリンピックでも問題となり、温暖化による感染症のリスクが高まっていると言えるでしょう。

日本は、2020年に東京オリンピック、パラリンピックの開催国になりますが、海外からのウイルスの侵入も含め、国内でも安心できる環境を構築しなければなりません。世界の祭典を成功させるためにも、ぜひ、万全な対策が必要であると言えましょう。

ところで、2009年1月に、日本最後のBSEの牛が確認されたことで、日本では肉類を食べない時期がありました。例えば、筆者がお招き頂いた焼肉屋へ行くと、なんと肉ではなく魚を出されたのです。これには驚きました。真菌、細菌、ウイルスは熱を通すと問題のないことを知っていた筆者ですから、笑うに笑えないエピソードですが、まして「モッタイナイ」と真に思ったことがありました。

※本記事は、2018年6月刊行の書籍『EARTH 2050』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。