次は、切断した鎖骨の一方の側、内側端にある胸鎖関節で鎖骨をはずす、とある。胸骨と鎖骨が接合している関節だが、上肢と体幹、すなわち、腕と身体を結び付ける唯一の関節らしい。

関節のある部分にメスを入れる。やや硬い感触で、メスが食い込み、骨に当たるのを感じる。メスを引き戻して、プラスチックの膜のような関節を包む袋を切開する。切れ目ができると、そこから次第に骨が分離してゆく。

完全に分離すると、もう一端はのこぎりで切断してあるので、ポロっとはずれた。鎖骨下筋の全体を見て、筋腹で切断し、鎖骨下動脈、静脈を確認する。どちらもかなり太い血管だ。鎖骨下静脈には上部から内頸静脈がつながり、合流してできるV字の所を静脈角という。左右のうち、左の方には胸管というリンパ管のなかでは最も太い管が流入しているのを確認する。

このリンパ管は、固定したライヘではもろく、少し強く摘まむと裂け目ができて、簡単に崩れてゆく。至る所くびれている奇妙な管だ。管の内部に弁が有るらしい。この左の静脈角の辺りにはリンパ節が密集し、胃癌などの転移の時、腫脹して鎖骨上窩に触れるので重要である。その他幾つかの動脈、静脈を確認してこの章を終わった。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『正統解剖』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。