「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこと。本記事では、職場で発生するコミュニケーションの問題と対応策を紹介していきます。

隠れている職場の期待

このストレスの感じ方の非対称性は、どうして起こるのでしょうか。まず、新卒に限らず、はじめてその職場に入った時のことを考えてみましょう。

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初出勤しました。勤務時間は何時から何時まで、休日は何日、休憩室や更衣室はここ、一般的なことは総務や庶務の人が教えてくれます。会社や業務のオリエンテーションを受けます。所属部署に配属され、具体的な仕事は先輩が教えてくれます。チームの場合もありますしシフト体制のこともあります。

新卒者には研修期間を設けて配属部署ではない場所で数ヵ月過ごす大企業もありますが、実際職場に配属され、先輩にいろいろ聞いていくうちに、(朝、来た時は、こんなふうにしなければならない)、(電話は率先して出なければならない)、(このことはこの先輩に聞けるが、あのことは別な先輩に聞こう)、(あの先輩は気難しいから気をつけよう)などと、誰かに言われるわけではないが、職場内の人の理解、状況の理解をしていきます。それらのことを通し、失敗もしながら徐々に自分の身の処し方を学び、その職場における自分を作り上げていきます。

人は仕事によって作られる面が大きいです。何の仕事をするかによって、その人物や人生が決まってくるとも言えます。現在は第三次産業、サービス業の割合が大きく、労働時間もフルタイムでは一日8時間、生活のほとんどの時間を職場で過ごすことになります。職場での身の処し方がわかり自分を作って行ける、現代の言葉では「適応できる」ことが、労働の死活問題となります。