本当に伝わるコミュニケーションというのは、実のところ、言葉や話し方、伝え方、プレゼンテーション力といったテクニックではないということがわかりました。逆にそういったテクニックがうまくなればなるほど、心の深いところからは、どんどん遠ざかってしまうのを、私自身が身をもって体験しました。

うまく伝えようと頭で考えれば考えるほど、通り一遍(いっぺん)なコミュニケーションになってしまい、そういった上澄(うわず)みの会話では、本音、魂で生きているような子どもたちや動物、本当の自分で生きている人を前にしたときには、通用しないというようなことも経験しました。言葉や話し方では、ごまかしきれないということです。

そんな壁に当たったときに私が取り組んだことは、頭を使って話すのではなく、ハートから思いが湧きあがってくるのを待ってから、ポツポツ会話をするという練習でした。そして、そんなふうに、思考を使わずにハートで話すことを意識するようになると、相手の反応が変わり、自分自身の仕事や生活にもいい変化が起こるようになりました。

頭で思ったことを、言葉を使って相手にわかりやすく噛(か)み砕(くだ)いて伝えるよりも、自分自身が魂とつながって、本当の自分が話したいことを話す。このほうが、言葉を多く語らなくても、相手が言葉以上のものを受け取ってくれるということを何度も体験しました。

言葉で伝えるのではなく、「魂につながって愛を届ける」ということを意識すると、言葉の次元を超えたコミュニケーションが可能になる――。

私はそれまで、ちゃんとうまく伝えられるように自分を一生懸命に磨(みが)いてきて、話すこと自体は仕事としてやれるほどになっていました。でも、このことを実際に体感したとき、大事なものを、どこかに置き忘れてしまっていたことに気がつきました。