⑦ 果物の産地が変わる 葡萄、ワインはどこへ

農業は自然環境への依存度の高い産業であり、そのなかでもとりわけ気候への適用範囲が狭い果樹栽培では、近年の地球温暖化のインパクトを直接的、間接的に受けるのではないかと懸念されていますが、すでに具体的な被害の発生も報告されています。

この温暖化による直接的インパクトとしては、産地の適応範囲の問題であり、間接的なインパクトとしては、果樹の品質問題として捉え、温暖化への対応策がどのように行われようとしているか、またどのような施策をしているかについて述べていきます。

日本の農業のなかでは、北海道から沖縄まで栽培地が広がっているお米や主要な野菜とは対象的に、果樹は、北のリンゴ、南の柑橘という産地の偏在があるのが特徴です。

それだけに、果樹生産では環境要因の気温、日射、雨水、土壌などのさまざまな自然環境に影響を受けやすいと言えます。なかでも、果樹としても多くの人の嗜好品となっている葡萄は、単に果樹としてだけではなく、ワインとしての二次的加工品の方が重宝されている数少ない特別な果樹と言えます。

近年は、地場産業として日本全国で、地元の葡萄栽培によってワインが生産されていますが、それはそれで結構多くの愛飲家に飲まれて浸透し、その消費量も増大傾向にあるようです。

2014年には、消費数量が4年連続過去最高を更新し、日本人のワイン一人当たりの消費量が10年前の1.62倍になったと、ビールを主要産業とする「キリンビール株式会社」の子会社でワインの製造・販売をする「メルシャン株式会社」が2017年6月にニュースリリースで発表しています。

・甲州ワイン

山梨と言えば、夏暑くて冬寒い。この半世紀で甲州ワインは味覚が変わるのではないかと心配されています。2℃程の温度上昇により甲州葡萄は100㎞北が適するとも言われるだけに、こうした産地では、品種改良や研究に余念がないとも言えます。近年は本場フランスに輸出していて、好評を得ているようです。

(2)生息地の変化が生み出す生態系破壊

地球上において変化に耐えて繁殖して来た生物は、私たち人間にとって厄介ものになることも少なくありません。

① 都市化による生物変化

地球上では人間、動物、植物、微生物、ウイルス、水、空気などがバランス良く自然界に存在することが重要ですが、化石燃料を大量に使用することにより地球の機能を麻痺させバランスを壊し、気候変動により生物の変化が目立ってきています(筆者の『酸欠地球への挑戦』)。

その例としては、「生物の北上」と「外来種の棲息」が挙げられるわけです。最近ではヒアリが日本に初上陸をして、話題になりました。大都市の多くは自然生態系から人為的生態系となり、そうした環境では人間よりはるかに生命力のあるゴキブリやネズミ、シロアリ、ハチ、蚊などが増殖し、これらが衛生害虫獣として食中毒や感染症、しいては人災の問題となっています。

※本記事は、2018年6月刊行の書籍『EARTH 2050』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。