「いや、研修医の時以来だよな」

細山が確認するように宮岡のほうを見て答える。

「確か最後に会った時は山ちゃんも一緒だったよ」

宮岡もそれに頷きながら答えた。

「そうなんだ」
「働いている場所は近くても、お互い忙しくて連絡は取っていなかったな」
「うん。山ちゃんが連絡してくれなかったら、当分会うこともなかったかもね」
「それなら連絡して良かった。やっぱりみんな忙しいんだね」
「まだ専門科に進んで1年目だし、忙しいっていうよりバタバタしている感じだよ」
「うん。なんか研修医の時より何もできなくなった気分。おれ、もうカンファレンス出たくないもん」

宮岡も細山も苦戦しているようだ。でも表情は明るい。苦戦しながらも充実した日々を送っているという感じだ。

「山ちゃんはどう? 東国は大変?」
「うん。2人と同じような感じかな。手術の執刀も少しずつさせてもらえるようになってきたところ」

宮岡の質問に最低限の言葉で答える。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『孤独な子ドクター』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。