髪も髭もぼさぼさ、浅黒い肌は傷だらけ。まるでヒトとサルの間のような風貌だ。林は唾を飲んだ。見るからにならず者である。キャラバン隊の面々は背を汗でびっしょりにして立ちすくんだ。

ならず者集落の男たちは、キャラバン隊と二十メートルほどの距離で立ち止まった。先頭の男が声を発した。轟々とした低い声である。林の耳には縄文語で意味が分からなかったが、警告を発しているのは明らかだった。

ユヒトは毅然とした口調で何事か言い返した。そしてスソノとイニギに目配せした。二人はこの集落への贈り物を持っていた。木の実と毛皮を詰めた大きな皮袋が二つ。ユヒトはそれを受け取ると林に向かい、

「相手の警戒を解くために少人数で行こう。ユウトとぼくの二人だ。あとのみんなはここで待っていて」

「大丈夫なのか」

岸谷はうろたえている。

「たぶんね」

ユヒトは答えた。

「聞くところによると、彼らは乱暴だけど、スジは通すらしい。こちらが礼を尽くせば危害は加えないだろう」

ユヒトは贈り物の袋を肩に担ぎ、林と共に歩き出した。残された者は二人の背中を見送った。小さくなる二人。まもなくならず者たちの前に達した。ユヒトが何事か話をしている。ならず者たちの大きな体がちょっとでも動くたびに、林のほっそりした背中がビクッと反応する。

ユヒトは贈り物を渡し、さらに話を続けた。きっと長老の言付けを伝えているのだろう。聞いているならず者たちの粗野な動きが、徐々に大人しくなっていった。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。