私も土産を買った経験があるし、中には同僚のためのものもなくはありません。しかし、登山が旅の主流になると、土産を買い求めることに違和感や嫌悪感、もしくは罪悪感さえ抱くようになりました。

私の若い頃には物流システムがまだ成熟していなかったか、あるいは成熟していたとして、そのことを私が把握していなかった時代です。登山となると大きな荷物を背負っているという物理的な問題があり、となるとそれ以外の荷物が加わるということを回避したい心理が働きます。ただでさえ大きく重たい荷物があるのに、さらなる負担や労苦を誰が望むでしょうか。

そういうわけで、私は登山帰りに土産を買うという習慣が、長いことありませんでした。それでも、全国各地に登山ででかけるのに、飛行機を利用するようになってからでしょうか、契機が訪れます。空港には土産物売り場があり、御当地のものが少なからず並んでいます。しかも、宅配便等でいくらでも送ることができ、手ブラで帰ってこられるわけです。

あるいはまた、経験を積むに連れて、その地方の名品とか逸品というものが知識として備わることもあります。例えば、たまたま買った土産がまずまず美味くて、自宅に戻ってからネットで検索してみると、そのメーカーのオススメ商品などを「発見・開拓」することもあります。お土産でなくても、それを定期的に購入するようにまでなったものだってありますし、そういうものを知人や友人に「配布」すると、決まって喜ばれます。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『旅のかたち 彩りの日本巡礼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。