東京

女の子

女の子は父親の仕事の都合でよく転校した。幼い女の子は、転校する度に皆に好かれる自分になろうと努力した。

ある時は社交的に振る舞い、ある時は自分のことを「蓮ちゃん」と呼ぶのをやめて「私」と呼ぶようにした。そしてある時は偏屈な者になり、周りの誰とも口を聞かなかったりした。

女の子はいつ親に捨てられたのかを知らない。何故ならその事実を受け入れることができたのが割と最近だからだ。

女の子は子供の頃からクラスの隅っこにいるような子達と自然と仲良くなった。女の子からすると同士に思えたのだった。彼らはとても無邪気で明るく、そしてとても優しかった。それなのに女の子はいつでも決まって三年後にはいなくなるのである。

今にも涙が溢れそうな目をした女の子は、一点だけを見つめ黙々と歩いた。誰の目にも付かない道を選び、静寂を好み、妄想にふけり、牢獄へと向かう。

そこでその女の子は黙々とピアノを弾く。自分にバリアを張るために。狂いそうになる孤独と恐怖に耐えながら、女の子は“逃げたい”とノートに綴る。

女の子は一人の弟を置き去りにして牢獄を脱出する。弟のことを考えると気がおかしくなるほど涙が止まらなかった。

自己嫌悪と確固たる意志と共に、女の子は身を削って生活のために働いた。人間の愛情を求め、人間に騙されながらも、人間を信じてしまう。普遍的な愛情を望み、絶望しながらも女の子はたった一人で列島を渡る。

そんな女の子が辿り着いたのは、都会の田舎にある最果ての場所だった。女の子は車とぬいぐるみを家族とする。小さなアパートで文章を書き、酒を飲み、今でも尚普遍的な愛を探し回っているのだった。

寂しさと闘っているけれども

寂しさがピークに達し、私は毎日ボーっと過ごしていた。思考回路も、表情までもがボーっとしていた。なんだか全てのことがどうでも良くなってしまうのだった。

そんな日々をやり過ごしたが、私は全てを流れに身を任せることに決めた。自分自身で意思決定し、全てのことに決断を下さなければならないと思っていたが、そうすることで失敗してきたという事実もある。むしろ無い頭を巡らせて間違った決断を下すくらいなら、いっそこのまま全て流れに身を任せた方が案外良い場所へ辿り着けるのではないかと思ったのだ。