ひまりは、ここまで書くとアッキーの顔をのぞきこんで目を見ながら、

「治るよね、治るよね、アッキーママは絶対に治るよね」

思わず大きな声になって叫んでしまい、静かな図書館に声が響きわたった。ひまりは思わず口に手をあてた。

まわりにいた人達は、ひまりの声に驚いて振り返ってしまった。アッキーの顔は無表情で冷たい目になっていった。調べれば調べるほどアッキーママの病気がわかってきたのだ。

ひまりは何度も、治るよね、と問いかけた。アッキーはひまりが段々とうるさくなり耐えられなくなってきた。アッキーはひまりを残して、先に帰る、とだけ言い図書館を出て帰っていってしまった。

机の上には辞書も本も広げっぱなしである。ひまりは私もアッキーと同じ気持ちなんだと、誰かアッキーに声を届けて欲しかった。ひとり取り残されたひまりは、ノートの上に顔をうつ伏して、何とも表現できない切なさに耐えるしかなかった。

恋して悩んで、⼤⼈と⼦どもの境界線で揺れる⽇々。双極性障害の⺟を持つ少年の⽢く切ない⻘春⼩説。
※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ずずず』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。